南海トラフ巨大地震による経済被害と死者数:政府作業部会の最新発表(2025年3月31日)

政府の作業部会が2025年3月31日に発表した南海トラフ巨大地震の新たな被害想定によると、最大で292.2兆円の経済被害最大29万8千人の死者が予測されています。これは国の当初予算の一般会計歳出の2倍を大きく上回る規模です。また、今回初めて災害関連死の予測も行われ、2万6千人から5万2千人と試算されています。

経済被害の予測

項目 以前の予測(2013年) 今回の予測(2025年) 変化
経済被害総額 214.2兆円~237.2兆円 270.3兆円~292.2兆円 +55兆円程度(約26%増)
建物・インフラなどの直接被害 不明 224.9兆円 -
ライフライン被害 不明 4.3兆円 -
 ―下水道 不明 3.4兆円 -
 ―上水道 不明 0.8兆円 -
 ―電力 不明 0.1兆円 -
生産・サービス低下による影響 不明 45.4兆円 -

経済被害増加の主な要因

物価高による復旧に必要な資材費などの高騰が主な要因です。直接的な建物やインフラの被害だけでなく、経済活動全体の停滞による損失も甚大であり、太平洋沿岸地域に集積する製造業や、卸売・小売業への影響が大きいと見込まれています。

人的被害の予測

項目 以前の予測 今回の予測(2025年) 変化
最大死者数 約32万3千人 約29万8千人 -2万5千人(約8%減)
 ―津波による死者 不明 21万5千人(全体の7割) -
災害関連死 未想定 2万6千人~5万2千人 新規追加
負傷者数 不明 最大95万人 -
避難者数(1週間後) 950万人 1230万人(40都府県) +280万人(約29%増)
食料不足(発生3日間) 3200万食 1990万食 -1210万食(約38%減)

避難の重要性

地震発生時の避難行動が人的被害を大きく左右します。強い揺れを感じたらすぐに避難する人の割合が20%と低い場合、死者は29万8千人に達しますが、早期避難の意識が70%に増えると死者は17万7千人にまで減少する可能性があります。

また、昼間に地震が発生し5分以内、深夜であれば10分以内に避難を開始した場合、死者数を大幅に減らせるとの試算も示されています。

ライフラインへの影響

地震発生1日後の影響予測:

上水道利用不可 最大3690万人
停電 最大2950万軒
固定電話不通 1310万回線

地域別の影響と特徴

津波高の予測

高知県土佐清水市と黒潮町:最大34メートル

静岡県下田市:最大31メートル

東海地方など太平洋沿岸の広い地域:10メートル超

浸水被害

浸水エリア:前回より3割拡大

深さ30センチ以上の浸水地域:11万5150ヘクタール

愛知県:最大約60平方キロメートルの浸水

大阪府:約27平方キロメートルの浸水

「半割れ」ケースの新たな想定

震源域の東側と西側でマグニチュード8級の地震が時間をおいて発生するケース

発生パターン 死者数予測
最大死者数 17万6千人
西側で先に地震発生→東側で後発 津波による死者約6万6千人 + 後発地震による7900人 = 合計約7万4千人
東側で先に地震発生→西側で後発 津波による死者2万9千人 + 後発地震による1万3千人 = 合計4万2千人
西側が後発地震で事前避難を徹底した場合 700人(大幅に減少)

※本資料は2025年3月31日に政府作業部会が発表した南海トラフ巨大地震の被害想定に基づいています。

※経済被害の金額は最大値を表示しています。