生命保険の受取人と相続税の関係

相続税対策として生命保険の受取人を配偶者にするか子供にするかという選択は、税金面だけでなく、 実生活の面からも検討する必要があります。

相続税の基本

項目 金額・計算式
生命保険の非課税枠 500万円 × 法定相続人の数
相続税の基礎控除 3000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
配偶者の税額軽減特例 1億6000万円まで、または相続財産の半分までは非課税

ケーススタディ

父親が亡くなり、母親と子供が相続する場合のシミュレーション：

相続財産:

法定相続人: 配偶者(母)と子供の2人

シナリオ1: 配偶者が生命保険受取人
シナリオ2: 子供が生命保険受取人

シナリオ1: 配偶者が生命保険受取人の場合

不動産B

5000万円

子供が相続

不動産A

4000万円

配偶者が相続

生命保険

1000万円

配偶者が受取

相続税の計算

課税対象財産:

不動産A(4000万円) + 不動産B(5000万円) = 9000万円

※生命保険は非課税枠(1000万円)以内なので加算されません

基礎控除額:

3000万円 + (600万円 × 2人) = 4200万円

課税対象額:

9000万円 - 4200万円 = 4800万円

相続税額: 620万円

各相続人の負担:

  • 配偶者: 0円 (配偶者軽減特例により免除)
  • 子供: 620万円

シナリオ2: 子供が生命保険受取人の場合

不動産B

5000万円

配偶者が相続

不動産A

4000万円

子供が相続

生命保険

1000万円

子供が受取

相続税の計算

課税対象財産:

不動産A(4000万円) + 不動産B(5000万円) = 9000万円

※生命保険は非課税枠(1000万円)以内なので加算されません

基礎控除額:

3000万円 + (600万円 × 2人) = 4200万円

課税対象額:

9000万円 - 4200万円 = 4800万円

相続税額: 620万円

各相続人の負担:

  • 配偶者: 0円 (配偶者軽減特例により免除)
  • 子供: 275万円

※生命保険1000万円を受け取ることで税金を納付できる

財産の入れ替え

税金面での考察

シナリオ 配偶者の相続税 子供の相続税 総相続税額
シナリオ1: 配偶者が生命保険受取人 0円 620万円 620万円
シナリオ2: 子供が生命保険受取人 0円 275万円 275万円
差額: 345万円

現実的な考慮点

税金面のメリット

生命保険を子供が受け取る方が税金は安くなります。子供は生命保険金を使って税金を支払うことができます。

生活面の考慮

生命保険の本来の目的は、残された配偶者が不自由なく生活するためのものです。税金対策だけで考えるのではなく、 配偶者の生活維持を考慮する必要があります。

現金の重要性

相続税対策として不動産のみに投資するのではなく、ある程度の現金を残しておくことが大切です。 「相続人が欲しいのは多少相続税が高くてもいいから現金」という点を忘れないことが重要です。

二次相続の考慮

配偶者に財産を集中させると、配偶者が亡くなった際の二次相続で多額の相続税がかかる可能性があります。 長期的な視点から相続計画を立てることが重要です。

結論:

相続税の計算上は生命保険の受取人を子供にするのが有利ですが、実際の生活面を考慮すると、 配偶者に十分な現金が残らない場合は配偶者を受取人にすべきです。 税金対策だけでなく、実生活の視点からも検討することが重要です。