起業家で「あり続ける」ために決めておくこと3つ

矢島 里佳:株式会社 和える 代表取締役

記事の要約

起業家として長く活動を続けるためには、売上だけを追い求めるのではなく、起業の「原点」と「動機」を見失わないことが重要です。この記事では、起業家として持続可能なキャリアを築くために、最初に決めておくべき3つの重要な決断について解説しています。

1「これだけ稼げば会社は回っていく」というラインを知る

売上を上げることが目的になると、本来の起業の意義を見失いがちです。まずは「どこまで成長できれば、不必要に事業の売上を伸ばす必要がないか」というラインを知ることが大切です。

多くの経営者は「前年度より売上を上げることが良い経営」と錯覚し、無理に売上を伸ばし続けようとします。しかし、売上の拡大が目標になると、社員は「何のために、この仕事をしているのか」という目的を見失いがちです。

大事なのは「足るを知ること」。事業が必要十分なお客様に届けられ、社員も心身ともに豊かに暮らしていくことができ、会社が成り立っているなら、それはもう立派な優良企業です。

「まずは必要最低限の年商と、心地よいと感じる年商の両方を定めましょう」

企業の状態 年商の目安(例)
経営が成り立つ最低限 5000万円
無理に売上を伸ばす必要のないライン 設定すべき

2自分の「最低限必要な年収」も決めておく

経営者個人としても、「これだけは稼がないと生活できない」という最低限の年収と、「ここまで稼げれば十分」という心地よい年収を決めることで、無理のない働き方の上限と下限が見えてきます。

起業の手段と目的が入れ替わらないためにも、「自分は、何のために起業したのか?」という起業の原点、動機に立ち返ることが大切です。

著者の矢島氏は創業時、最低でも年収500万円は稼ぎたいと思ってはじめました。それは自分ひとりがまず心豊かに生きていくため、さらに余白を持って家族や大切な人の「やりたい」を応援できる心地よい年収は700万円以上と設定していました。

収入の種類 金額(著者の例) 設定理由
最低限必要な年収 500万円 自分らしく生きるために必要
心地よい年収 700万円以上 家族や大切な人の「やりたい」も応援できる

年収の設定は仮説であり、家族構成の変化など状況に応じて柔軟に見直すことも大切です。

31週間のうち何日休み、1日何時間働くのかを決める

1人の人間としての暮らしを大切にしながら働くためには、具体的な働き方のルールを自分で決めることが重要です。「この時間は休む、この時間は働く」と決めてから、その時間内に収まるようにしていくと、自分の暮らしや家族との時間を犠牲にすることなく働けるようになります。

著者の矢島氏は「1週間のうち3日休んで、1日6〜8時間働く」と最初に決めて、その時間内に収まる働き方をするようになりました。

無理なく働くことが持続可能な起業家であり続けるためのカギです。何が無理で何が無理でないのかはライフステージによっても異なるため、自分でそのつど自分と対話して決めていく必要があります。

働き方の要素 著者の設定 現実の状況
週の休日数 3日 平日丸1日休みは少なく、半日勤務を組み合わせて実質3日
1日の労働時間 6〜8時間 概ね維持
次の目標 平日も丸1日休める日を作る 取り組み中

起業家だからといって肩肘張って仕事ひと筋で生きる必要はありません。休むときは休んで、1人の人間であることを忘れないでください。

まとめ:持続可能な起業家としてあり続けるために

起業家として長く活動を続けるためには、以下の3つを明確に決めておくことが重要です:

  1. 会社の適正な売上ラインを知り、無理に売上を伸ばし続けない
  2. 個人の最低限と心地よい年収を設定し、働き方の上限と下限を明確にする
  3. 具体的な労働時間と休日を決め、その範囲内で仕事を完結させる習慣をつける

これらを意識することで、起業の「原点」と「動機」を見失わず、長く持続可能な形で起業家であり続けることができます。無理なく働けるスタイルでなければ、起業家として継続することはできないのです。