ビジネス数字の読解力:本質を見抜く視点

ビジネスシーンでは数字を正しく読み解く力が不可欠です。表面的な数字に惑わされず、その裏側にある本質を見抜くためのポイントを解説します。

1. ファクト(事実)と個人の意見を区別する

物事を正しく理解するためには、客観的な事実と主観的な意見を分けて考える必要があります。

ファクト (Fact)

  • 客観的な事実
  • 数字で示せる場合が多い (例: 売上、点数)
  • 誰が見ても同じ認識になるもの

個人の意見 (Opinion)

  • 主観的な考えや感情
  • 価値観に左右される (例: 好き嫌い、評価)
  • 人によって異なる可能性がある
注意点: ビジネスでは特にファクトが重視されます。「〇〇だと思う」「△△さんの意見は正しい」といった根拠のない意見に依存しすぎないようにしましょう。

2. 数字の裏側を見通す

数字はファクトですが、一面的な見方では本質を見誤る可能性があります。多面的・複合的に情報を捉えることが重要です。

例1:レストランチェーン店の売上

状況設定

新店舗Aのオープン1ヶ月後の視察。店長は「好調です」と報告。

データ

項目 内容 分類
店長の報告 「好調ですのでご安心ください」 個人の意見
昼時の状況 席が半分ほど埋まっていた ファクト(弱め:一時的な可能性あり)
売上 (オープン後2週間) 300万円 ファクト
売上 (直近2週間) 180万円 ファクト

読み解き

店長の意見とは裏腹に、後半の売上は前半の60%に減少しています。単に「好調」と判断するのは危険です。

さらに確認すべきファクト(例)

これらのファクトを分析することで、より正確な状況把握と本質的な課題発見につながります。

例2:「お客様満足度95%」は本当にスゴイ?

「満足度95%」の裏側にある疑問点

この数字を見ただけでは、鵜呑みにできません。以下の点を考慮する必要があります。

  • 母数はどれくらい? (20人? 2000人?) 母数が少なければ、信頼性は低くなります。
  • アンケートの取り方は? (回答しやすい質問形式? 回答者の偏りは?) 作為的な誘導がないか確認が必要です。
  • 「満足」の定義は? (具体的にどの点に満足しているのか?)
  • 残りの5%の意見は? (不満の内容は何か?)

数字の算出方法や背景情報まで読み解くことで、その数字の正確性信憑性を判断できます。

3. 事実のように書かれた「推測・憶測」に注意

事実は事実、そこから導かれる推測はあくまで推測です。混同しないようにしましょう。

例:サトシはなぜ運動会を休んだ?

提示された情報

ありがちな推測(=事実ではない)

「サトシは運動したくないから、昨日の運動会を休んだ」

注意点

これはあくまで可能性の一つであり、事実ではありません。風邪をひいた、他の用事があったなど、別の理由も考えられます。メディアやPRなどで、事実を基に特定の結論へ誘導する手法には注意が必要です。

4. 都合の良い「事実」の切り取りに注意

意見を主張する人は、自分に都合の良い事実だけを提示することがあります。

例:「日本は豊かな国」?

主張の根拠とされる「事実」

指標 日本の状況 比較対象
失業率 低い (187カ国中168位) 世界各国
普通離婚率 (人口1000人あたり) 1.5 アメリカ (2.0), 韓国 (2.0) より低い

主張

「これらのデータから、日本は世界的に見て豊かな国だと言える」

疑問点・注意点

提示された事実だけでなく、その解釈の妥当性や、隠されている可能性のある他の事実にも目を向けることが重要です。

結論:本質を見抜く読解力を磨く

数字や情報を鵜呑みにせず、以下の点を意識することで、本質を見抜く読解力は向上します。

数字の裏側を見通す力は、本質を見通す力です。