生成AIの分野別利用状況レポート:学生と企業の現状

生成AIの利用状況について、学生と企業それぞれの現状、活用事例、課題をまとめました。

1. 学生の生成AI利用状況

1.1 利用率と認識

学生全体の利用率は3割強。教員より高いが半数未満。

特に大学・大学院生で利用率が高い。

学生は利用を肯定的に捉えており、今後の利用拡大が見込まれる。

1.2 活用事例

学習活動の支援

  • 不明点の質問、英会話練習、英語表現改善
  • 興味に応じた単語・例文リスト作成
  • 外国人児童生徒の日本語学習補助

研究・学業の効率化

  • データ成形、論文探しサポート
  • プログラムのバグ特定・修正
  • レポート・小論文のアイデア出し、文章推敲の「たたき台」作成

クリエイティブな活動

  • 読書感想文、自由研究、作文、小説・シナリオ作成
  • SNS投稿コンテンツ作成
  • プログラミングコード作成

その他の活用

  • 部活動のトレーニングメニュー作成
  • 修学旅行プラン作成、ディベート想定質問作成
  • ブレインストーミング、志望校選択ヒント
  • 志望動機作成、調べ物、暇つぶし、プレゼント選び

1.3 課題と教育現場の対応

学生における課題 (数値データ)

課題内容 該当する学生の割合
ファクトチェック方法を知らない 64%
不正行為の判断ができない (高校生) 5割
利用規約の年齢制限・保護者同意を知らない 54%
課題/レポートにコピペ提出経験あり 27.8%
学習活動がAIに依存する不安を感じる 半数以上

教育現場の認識と対応

教員の認識・要望 該当する教員の割合
学生に不正行為をさせない取り組みが必要 約7割
学校・大学でのガイドラインが必要 約7割

ガイドライン策定と組織的支援、倫理教育(リスク知識、適切な利用・引用方法)の提供が必要。

2. 企業の生成AI利用状況

2.1 全体的な利用状況

項目 数値
国内企業の業務での生成AI活用率 71.3%

ただし、企業規模や業種により温度差あり。

2.2 中小企業の利用状況

普及率は依然として低い。導入企業では業務効率化の成果あり。

多くの経営者は多忙で着手できず、過去に試して活用できなかったケースも。

業種による温度差

  • 製造業・建設業:少しずつ活用開始
  • 飲食業・サービス業:導入はほとんど進まず(現場の不安、情報漏洩懸念)

普及が進まない要因

  • 主要機能(画像生成、会話)と中小企業の実需の乖離
  • 情報漏洩への漠然とした不安

活用事例

  • 無料版ChatGPTでのSNS投稿文作成(文章作成工数削減)
  • 営業提案効率化(文字起こし・提案書作成自動化)

メリット

メリット 詳細 / 数値
非生産的業務の削減 報告書作成などをAIに任せ、本質的な仕事に注力可能
時間節約効果 活用者の58%が週に5時間節約

経営者自身のメリット理解と、勉強会/セミナー参加が重要。

2.3 大手企業の活用事例

自社特化AIの開発や、ビジネス向け製品の活用が進む。

  • パナソニック コネクト: 独自AI「ConnectAI」で国内全社員18.6万時間削減 (検索, データ作成, 品質管理)
  • 江崎グリコ: AIチャットボットで問合せ約31%削減、研究開発期間短縮
  • りそな: 銀行業務支援で効率性向上
  • ヤマト運輸: 荷物量予測、観光案内で業務負荷低減
  • 日本コカ・コーラ: 広告・マーケティング戦略に活用
  • ベネッセホールディングス: 多方面で活用し社内業務改革
  • LINEヤフー: 自社サービス活用で売上増目指す

2.4 ビジネスにおける一般的な活用例

  • 文章関連: 作成(メール、ブログ、企画書)、要約、翻訳
  • 画像・動画作成: 広告、プレゼン資料、Webバナー、SNSビジュアル
  • 調査・分析: 市場・顧客ニーズ、トレンド可視化、競合・業界動向把握
  • プログラミング: コード作成、デバッグ、エラーチェック
  • 会議関連: 文字起こし、議事録作成
  • 顧客対応: 高度なチャットボット(24/365、多言語対応)

2.5 企業におけるリスク

リスクの種類 内容と対策
情報漏洩 入力データが学習に使われ流出する可能性。
対策: 機密情報入力禁止ルール、学習機能無効化ツール、高セキュリティツール、ガイドライン整備、社員教育。
誤情報 (ハルシネーション) 事実でない情報を生成する可能性。
対策: 人間によるファクトチェック必須、複数情報源との照合、チェックフロー構築。
権利の侵害 生成物が著作権・商標権・肖像権などを侵害する可能性。
対策: 汎用的なAIモデル選択、社員研修(権利理解)、法務連携チェック体制。
リテラシー・スキルの不足 リスク把握・管理が難しいと感じる企業が61.4%
対策: AI規制・倫理の理解、リスク対応体制整備。

まとめと今後の展望

生成AIは学生の学習や企業の業務効率化に大きな可能性を持つ一方、分野ごとの温度差や共通のリスク・課題が存在します。

  • 学生: 情報モラル教育、適切な利用法指導、不正行為防止、ガイドライン策定、教員サポートが急務。
  • 企業: リスク管理体制構築(情報漏洩、誤情報、権利侵害)、社員リテラシー向上が不可欠。

今後はAIとの共存を前提とし、代替されにくいスキル(創造性、判断力)やAI活用スキルを身につけることが重要になります。