経理はAIをこう使え!

ChatGPT、NotebookLMなどを活用した経理業務の変革

AI活用の基本

生成AIを効果的に活用するための基本的なポイントです。

プロンプトの基本形

AIへの指示(プロンプト)は、以下の4要素を意識するとスムーズな対話が期待できます。

#前提: AIに期待する役割 (例: あなたは経験豊富な経理コンサルタントです)

#命令: 具体的にやってほしいこと (例: この契約書のリスクを洗い出してください)

#制約条件: 指示実行上の注意点 (例: 専門用語は使わないでください)

#出力形式: 結果の示し方 (例: 箇条書きでお願いします)

オプトアウト申請の重要性

経理業務で扱う機密情報を守るため、AIが入力情報を学習に使わないようにする「オプトアウト」設定が不可欠です。

例: ChatGPTでは、設定画面の「Data controls」にある「Improve the model for everyone」をオフにします。

GPTs (ChatGPTの機能)

特定の目的に合わせてChatGPTをカスタマイズできる機能です。作成したGPTsは他者と共有も可能で、経理のような専門業務に特化したAIアシスタントを作成できます。

経理業務への生成AI活用事例 (9選)

具体的なAIツールと経理業務での活用例を紹介します。

No. AIツール 経理業務での活用事例 ポイント
1 ChatGPT 財務分析レポート作成 経済産業省「ローカルベンチマーク」データ等を使用。簡単な指示で分析レポートとアドバイスを作成。特にキャンバスモードでの編集・修正が容易。
2 Google スプレッドシート + Gemini 表計算ソフトでのデータ集計 自然言語で指示すると、Geminiが適切な関数を提案し、シートに自動適用。関数検索の手間を削減。
3 Gmail + Gemini メール処理の効率化 未読メールから重要メールをピックアップ・要約。指示に基づき丁寧な返信文案を作成。
4 Gemini クイズアプリ作成 (研修ツール) 難解なリース会計基準などのPDFを読み込ませ、理解度向上のためのインタラクティブなクイズアプリを数分で作成可能。プログラミング知識不要。
5 Gemini PDF読取 (外国語書類対応) 外国語(例: ベトナム語の税務申告書)のPDFから必要な項目(税引前利益、納税額など)を正確に抽出し、日本語で、日本の申告書に転記しやすい形で整理。
6 NotebookLM (Google) 契約書分析 アップロードした資料のみを"教科書"として回答を生成するため、ハルシネーション(AIの誤情報生成)リスクを低減。回答の根拠も明確に提示。会計基準解釈や社内規程に関する問い合わせ対応に適する。
7 NotebookLM (Google) 英文財務報告書作成支援 日本語の有価証券報告書、会社名表記リスト、過去のAnnual Reportをソースに、固有名詞のスペルミスなく、過去の表現を踏襲した高精度な英文を生成。用語統一性や文書スタイルの一貫性維持に有効。
8 Claude 図解・グラフ作成 複雑な情報(リース会計基準の文章、有価証券報告書の数字)を分かりやすいフローチャートや見栄えの良いグラフに瞬時に変換。プレゼン資料作成等に有用。
9 ChatGPT Operator 単純作業の自動化 (AIエージェント) Webブラウザ上で行う一連の操作(例: 複数URLをNotebookLMにソースとして追加)をAIが代行。反復的な単純作業を自動化し、業務効率を大幅に向上。

各活用事例の詳細は、セミナーでのデモンストレーションに基づいています。

情報漏洩リスクと対策

AI活用における情報漏洩リスクは無視できませんが、過度に恐れる必要はありません。正しい知識と対策が重要です。

  • クラウド会計登場時と同様、リスクと利便性を天秤にかけて判断する。
  • メールでの機密情報送信もリスクがあるのと同様に、生成AIも他のクラウドサービスと同等に考える。
  • 対策: オプトアウト設定の徹底、社内ルールの策定。
  • チームでのAI活用: 便利だったプロンプトを社内SNSなどで共有し、一部のエース社員だけでなく組織全体で活用を促進する。

AIエージェントと経理の未来

AIエージェント(例: ChatGPT Operator)の登場は、経理業務を大きく変える可能性を秘めています。

  • 従来のAIが「補助」だったのに対し、AIエージェントは経理の「メイン業務」の一部を担う可能性。
  • 優秀な経理担当者の条件だった「作業スピード」や「知識量」はAIに移行し、人間はより付加価値の高い役割が求められる。

AI時代に経理担当者が価値を出し続けるための3つのカギ:

  1. まずはデジタル化: AI活用の前提として、紙ベースの情報をPDF化するなどデータ化を進める。
  2. 最新のAIに触れる: AIの世界は進化が速いため、常に新しい情報にアンテナを張り、自ら試すことが大切。
  3. 人とつながる: 部門間の調整や現場の悩み解決など、人間ならではのコミュニケーション能力や共感力がますます重要になる。

これからの経理は、単なる記録係ではなく、組織全体の課題解決をリードする存在へと変化していく可能性があります。

「AIを使いこなせる経理と、そうでない経理。その差は、これからどんどん開いていく。今からデジタル化を進め、AIに触れておくことが未来への投資になる。」

まとめ

生成AIは、もはや遠い未来の話ではなく、経理業務のすぐ隣まで来ています。

「AIなんて、よく分からない」「AIは信用できなくて怖い」と感じている経理担当者も、まずは小さな一歩から、身近な業務でAIを試してみることが推奨されます。

それが、変化の激しい時代を乗りこなし、これからの経理担当者として価値を高めていくためのスタートラインとなるでしょう。