ChatGPTはユーザーの入力から「学習」するのか?初心者向け解説

AI

はじめに

ChatGPTのような大規模言語モデルが私たちの入力から学習するかどうかという疑問について、初心者にもわかりやすく解説します。結論から言うと、ChatGPTは個々のユーザーのプロンプトからその場で新たな「学習」をすることはありません

ChatGPTの「学習」と「推論」の仕組み

AIにおける「学習」と「推論」の基本概念

AIの処理は大きく「学習」と「推論」に分けられます:

学習(Training)

学習とは、AIモデルが大量のデータから知識を吸収し、自分のパラメータを調整するプロセスです。人間が学校で勉強するのに似ています。この段階では時間も計算資源も非常に大量に必要となります。これは「AIの学校教育」に相当します。

推論(Inference)

推論とは、学習済みのAIモデルが新たな入力(質問や依頼)に対して学習した知識を使って答えを返すプロセスです。人間で例えると、勉強して身につけた知識を使ってテストの問題に答えたり仕事の課題を解決したりする段階です。推論時にはモデルの内部パラメータ(知識)は基本的に変化しません。

ChatGPTの「学習」プロセス

ChatGPT(GPT-4など)のベースとなる言語モデルは、公開前に大規模なデータセットで「学習」(訓練)されています。例えばGPT-3.5の場合、2021年9月までのインターネット上の大量の文章データを学習しており、それ以降に生まれた新しいデータはモデルに組み込まれていません。

学習により蓄積された知識の特徴:

  • 包括的な知識:インターネット上の百科事典的情報など、幅広い分野のパターンを含む
  • 統計的パターン:単語や文章の出現パターンを統計的に捉えて内部に保存
  • 固定された知識:一度学習が完了すると、モデルのパラメータは固定される

ChatGPTの「推論」プロセス

私たちがChatGPTに質問したり指示を出したりする対話段階では、モデルはあらかじめ学習して得た知識を総動員して、与えられた入力に対して最適と思われる返答を生成します。

ChatGPTの場合、ユーザーとの対話履歴も入力データの一部として考慮されます。直近の会話履歴を文脈として保持し、その履歴と最新のユーザー入力をまとめて一つの入力データ(プロンプト)として処理します。その結果、会話の流れに沿った一貫性のある応答が生成されます。

ChatGPTが「参照」するもの

推論時にモデルが利用できる情報源は主に二つあります:

  1. 事前に学習した知識の参照:モデル内部に蓄積された膨大な知識ベースから、入力に関連しそうなパターンや事例を思い出し(検索し)、回答に反映します。モデルはあくまで「学習データの中にあった類似パターン」を元に回答を作るため、過去に見たことのない問いには弱いですが、見たことがあるテーマならそれを手がかりにそれらしい回答ができます。
  2. ユーザーから与えられた情報の参照:ユーザーがプロンプト内で追加の情報を提供した場合、モデルはそのプロンプト中の情報を参照して回答を作ります。同じ会話内であれば、先にユーザーが教えた事実や訂正も参照されます。

これらの参照は一時的な利用に過ぎません。会話中にはユーザーが与えた情報を覚えているように振る舞いますが、それは人間で言う「短期記憶」のようなもので、モデル自体が恒久的に記憶を更新しているわけではありません。次に新しい会話を始めれば、その短期記憶はリセットされ、また元の学習済み知識だけを頼りに応答を生成する状態に戻ります。

ChatGPTはユーザーの入力から学習するのか?

結論から言えば、いいえ、ChatGPT(GPT-4 Turbo)はユーザーからの単発の要求や対話を通じてその場で新たな知識を学習・蓄積することはありません。ChatGPTはあくまで事前に学習された知識を使って推論(応答生成)している静的なモデルであり、新しいことを自発的に覚えることはできないのです。

例: あなたがChatGPTに「この文章をジブリ映画の予告編風に書き直して」と頼んだとします。ChatGPTは過去に学習したジブリ映画のストーリーや雰囲気、予告編風ナレーションのパターンなどを参照して、それっぽい文章を生成してくれるでしょう。しかし、このやり取りによってChatGPTの内部の知識がアップデートされることはありません。次の日に別の人が同じ依頼をしても、ChatGPTが前回の対話から学習してパワーアップしている、というようなことは起こらないのです。

なぜChatGPTはその場で学習しないのか?

主な理由:

  1. 効率性:モデルの学習には莫大な計算が必要です。ChatGPTがユーザーとの会話ごとにモデルを更新するようなことをすれば、処理に時間がかかりすぎて実用的ではありませんし、サーバーの負荷も膨大になります。
  2. 一般化(汎化)能力の維持:モデルが訓練データからパターンを一般化して学習しているおかげで、新たな入力にも柔軟に対応できます。もし推論時に出会うすべてのユーザー入力を逐次学習してしまうと、特定の入力に過剰適応してしまい、汎用的な性能が損なわれる恐れがあります。
  3. 安全性・一貫性:ユーザーからの入力には誤情報や有害な情報が含まれる場合もあります。逐次学習してしまうと、そうした情報にモデルが影響を受けかねません。ChatGPTは安全性と一貫性を保つために、開発段階で人間によるレビューやフィルタリングを経たデータで学習されています。

学習・参照・推論の違い

以下の表は「学習」「参照」「推論」の違いをまとめたものです:

概念学習(Training)参照(Referencing)推論(Inference)
役割モデルに知識を蓄える段階(モデルのパラメータを更新)モデルが持つ知識や与えられた情報を呼び出して利用すること蓄えた知識を使って回答を生成する段階(モデルのパラメータは更新しない)
タイミング開発時(事前学習や追加のファインチューニング時)に実行される推論時に随時行われる(学習済み知識の参照、コンテキスト参照)ユーザーから入力があったときに実行される(対話中ずっと行われる処理)
データ源大規模データセット(インターネットテキストなど)、人間のフィードバック①学習済みの内部知識②ユーザーから提供された情報(プロンプトや会話履歴)ユーザーの入力(質問・依頼)+必要に応じて会話履歴(文脈)
処理内容データからパターンを学習しモデルの重みを調整する関連しそうな知識や情報を検索し回答に反映する入力に対して最適と思われる出力を計算する(次単語の確率予測を連ねて文章生成)
モデルへの影響モデルを更新する(新しい知識が組み込まれる)モデル自体は更新しない(一時的に情報を保持するのみ)モデル自体は更新しない(出力を返すのみ)

まとめ

ChatGPTはあなたとの会話内容を次の会話まで覚えていることはなく、あなたの指示から新たな知識を学習することもありません。毎回リセットされた学習済みモデルとして対話に臨み、その都度与えられた入力に対して最適な応答を生成しています。良い質問をすればするほど、ChatGPTは自分の持つ知識の中から的確な答えを引き出しやすくなります。

現在のChatGPT (GPT-4 Turbo) に関して言えば、その挙動は「学習済みモデルによるパターンマッチングと応答生成」に基づくものです。従って、「この画像をジブリ風にして」と頼んだからといってChatGPTが新たにジブリ風の絵の描き方を学習するわけではなく、あくまでこれまでに培った知識を駆使してそれらしい返答を作っているのです。

ChatGPTとうまく付き合うコツは、モデルの仕組みを理解して適切にプロンプト(指示)を与えることです。明確な指示や有用な情報を与えればある程度期待通りの応答が得られますが、曖昧な質問や未知の話題には的外れな答えになることもあります。ChatGPTが「今持っている知識」を最大限発揮できるような聞き方をすることが、上手に使いこなすポイントと言えるでしょう。

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