年金制度改革の最新動向
2024年の財政検証を受けて、2025年の通常国会に年金制度改革案が提出される予定です。年金制度は複雑で理解しにくい部分が多いですが、仕組みを知ることでお得な受け取り方が可能になります。
年金額の変動の仕組み
賃金スライドと物価スライド
- 新規裁定者(新たに年金を受け取り始める65~67歳の人):現役世代の名目手取り賃金の増減率に合わせて年金額が変動(賃金スライド)
- 既裁定者(68歳以上の受給者):前年の消費者物価に合わせて年金額が変動(物価スライド)
- 特例:賃金上昇率が物価上昇率を下回る場合や、賃金が下落している場合は、既裁定者の年金額も賃金の変動率に合わせて調整
マクロ経済スライド
公的年金加入者数の減少と平均寿命の伸びに対応するための給付抑制システム:
- マクロ経済スライドによる減少率 = 公的年金加入者数減少率 + 平均寿命伸び率 (例:減少率0.2%+平均寿命伸び率0.3% = 合計0.5%)
- 適用条件:
- 物価上昇率・賃金上昇率がマクロ経済スライド減少率を上回る場合:増加率から減少率を差し引いた分だけ年金額が増加
- 物価上昇率・賃金上昇率がマクロ経済スライド減少率を下回る場合:年金額は据え置きで未適用分は翌年度に持ち越し
- 物価上昇率・賃金上昇率がマイナスの場合:マクロ経済スライドは適用されず、減少率は全て翌年度に持ち越し
2025年度までにマクロ経済スライドが適用されたのは6回のみで、年金水準が高止まりする問題が発生しています。
年金のお得な受け取り方
繰り上げ受給・繰り下げ受給
- 繰り上げ受給(60~64歳から受給開始):
- 1ヶ月早めるごとに0.4%減額(2022年3月31日以前に60歳になった人は0.5%減額)
- 60歳から受給すると24%減額(0.4%×60ヶ月)
- 繰り下げ受給(66~75歳から受給開始):
- 1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額
- 70歳まで繰り下げると42%増額(0.7%×60ヶ月)
- 75歳まで繰り下げると84%増額(0.7%×120ヶ月)
注意点と戦略
- 65歳以降も厚生年金に加入して高収入を得る場合、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止になることがあり、その部分は繰り下げ増額の対象にならない
- 厚生年金と基礎年金は個別に繰り上げ・繰り下げが可能
- 繰り下げ受給中に一括受取も可能だが、延滞税がかかるため非推奨
一括の受け取りはお勧めできません。それは延滞税がかかるからです。受け取るのは75歳時点であっても、税務上は70歳で1年分、71歳で1年分、72歳で1年分、73歳で1年分、74歳で1年分受け取ったと見なされます。そのために、該当年に申告、納税をしていないということになり、延滞税が課されます。
- 加給年金(配偶者向け年額40万8100円、2020年度)を受け取りながら繰り下げ受給するには、基礎年金のみ繰り下げて老齢厚生年金は通常通り受給する方法がある
- 在職老齢年金の支給停止を避けるには、会社に雇用されない形態(業務委託など)で働く方法がある
年金制度を正しく理解し、自分に合った受け取り方を選択することで、老後の生活をより豊かにすることができます。
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