相続税と生命保険の関係
一般的に、相続税を抑えるためには「配偶者を受取人にしない方がお得」という理論があります。しかし、実際はほとんどの人が配偶者を受取人にしているため、相続税を多く払っている可能性があります。
相続税の計算例
具体例を使って解説されています:
前提条件
- 父が亡くなった場合の相続
- 相続人は母(配偶者)と子供
- 相続財産:不動産2件(評価額4,000万円と5,000万円)= 計9,000万円
- 生命保険:1,000万円
相続税計算の重要ポイント
- 生命保険の非課税枠:
- 500万円 × 法定相続人数
- この例では500万円 × 2人 = 1,000万円が非課税
- 相続税全体の基礎控除:
- 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人数)
- この例では3,000万円 + (600万円 × 2人) = 4,200万円
- 課税対象額:
- 9,000万円 – 4,200万円 = 4,800万円
- 相続税額:
- 計算結果:620万円(相続人で分割)
ケース1:生命保険を母(配偶者)が受け取るケース
相続人 | 取得財産 | 割合 | 相続税額(計算上) | 実際の納税額 |
---|---|---|---|---|
母 | 不動産4,000万円 + 生命保険1,000万円 = 5,000万円 | 4,000万円÷9,000万円 = 約44% | 約275万円 | 0円(配偶者控除) |
子 | 不動産5,000万円 | 5,000万円÷9,000万円 = 約56% | 約344万円 | 344万円 |
※配偶者控除:配偶者が取得した財産は1億6,000万円まで相続税が免除される特例があります。
ケース2:生命保険を子が受け取るケース
相続人 | 取得財産 | 割合 | 相続税額(計算上) | 実際の納税額 |
---|---|---|---|---|
母 | 不動産5,000万円 | 5,000万円÷9,000万円 = 約56% | 約344万円 | 0円(配偶者控除) |
子 | 不動産4,000万円 + 生命保険1,000万円 = 5,000万円 | 4,000万円÷9,000万円 = 約44% | 約275万円 | 275万円 |
理論と現実のギャップ
相続税の観点だけなら、生命保険の受取人を子どもにする方が合理的です。その理由:
- 配偶者は1億6,000万円まで相続税が免除されるため、貴重な生命保険の非課税枠を使う必要がない
- 子どもが生命保険を受け取れば、その資金で相続税を払うことができる
しかし現実的には:
- 生命保険は本来、残された配偶者の生活を守るためのもの
- 配偶者の生活資金が不足する可能性がある
- 子どもが配偶者の面倒を見てくれる保証はない
最適な相続対策
- 相続税対策として不動産に偏り過ぎず、現金も残しておく
- 配偶者に十分な現金が残せるなら、生命保険は子どもを受取人にしても良い
- 配偶者に残せる現金が少ない場合は、生命保険の受取人も配偶者にするべき
相続人が本当に欲しいのは、「相続税が安くなる不動産」よりも「すぐに使える現金」であることを忘れないことが重要です。
まとめ
相続税だけを考えるなら、生命保険の受取人を配偶者以外にすることでメリットがあります。しかし、残された配偶者の生活を第一に考え、全体的なバランスを取ることが大切です。相続対策としては現金をある程度残しておくことが重要であり、不動産偏重は避けるべきです。
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