はじめに
本記事は「都立学校生成AI利活用ガイドライン Ver.1.0」および関連資料に基づき、東京都立学校における生成AIサービスの概要、利用指針、留意点、初回授業のモデル指導案についての重要事項をまとめたものです。
都立学校 生成AI利活用ガイドライン Ver.1.0 図解
「都立学校生成AI利活用ガイドライン Ver.1.0」に基づく概要
都立AIサービスの概要
「都立AI」は教職員と児童・生徒双方が利用できる都立学校専用の生成AIサービスです。
都立AIの4つの特長
特長 | 詳細 |
---|---|
使いやすさ | 多様な使い方に柔軟に対応し、教職員、児童・生徒双方が円滑に利用可能 |
安心・安全 | 入力はAIに学習されず、不適切なやり取りのフィルタリング機能あり |
高性能 | GPT 4o-mini以上の性能を持つモデルに対応 |
専用環境 | 東京都専用テナントで、16万人が円滑に利用できる環境 |
都立AIの主な機能
- チャット機能(画像入力可能)
- カスタムAI機能(専用データとふるまいをもとにした生成AI利用)
- プロンプトテンプレート機能(様々なテンプレートで効果的に利用)
都立AIの活用例
- 生成AIを活用した授業展開(実験結果の精査など)
- 探究学習のサポート(情報収集・整理・分析から発表資料作成まで)
- 事務文書作成の効率アップ(定型的な文書のドラフト作成)
その他許可されているAIサービス
- 教員向け:都庁職員用「Copilot」(校務のみ)
- 教職員・児童生徒向け:画像生成AI「Adobe Firefly」(「Adobe Express」から利用可能)
生成AI活用の目的
教職員における目的
- 校務の効率化と質の向上
- 児童・生徒の教育活動を補助し、学びを深化
- AI時代における情報モラルやリテラシーの育成
児童・生徒における目的
- 自己の能力(思考力・判断力・表現力等)を伸長
- 教科等における学習活動の更なる充実
- AI時代における情報モラルやリテラシーの習得
教育活動で使用する生成AIの要件
要件 | 内容 |
---|---|
1 | 利用者の入力した情報が生成AI側で再学習されないもの |
2 | 生成AIとコンピューター間の経路の情報管理が確保されたもの |
3 | 生成AIが学習に使用している情報の透明性が確保され、著作権等に配慮されたもの |
生成AI活用の指針
教職員の好ましい使い方
- 適切なAIリテラシーを身に付け、生成AI技術やガイドラインを正しく理解して使用
- 既存の校務や授業の目的を効果的に達成するために試行錯誤を続ける
- 「都立AIスマートルール」の内容を児童・生徒に指導し、自己の能力を伸ばすための活用を徹底
教職員の避けるべき使い方
- 児童・生徒の主体的な思考や人間的な対話を疎かにして使用させる
児童・生徒の好ましい使い方
- 生成AI技術を正しく理解し、新しい視点や発想をもたらす手段として使用
- 学習活動等の目的を達成するために積極的に活用
- 誤りや偏りの確認を行いながら活用など、適切なAIリテラシーを身に付け「都立AIスマートルール」を守って活用
児童・生徒の避けるべき使い方
- 生成AIの回答に依存し、主体的な思考や対話を疎かにしたり、正確性・事実関係の確認を行わずに使用
AIリテラシーの育成
学習内容
- 基本概念や仕組み(生成AI自体を学ぶ)
- 利用上の注意点(生成AIの使い方)
- 効果的な活用(生成AIの効果的な活用)
AI初回授業
- 原則として、生成AIを授業内で活用する前に「AI初回授業」を実施
- AIリテラシーに関する基本的事項を指導
- その後の活用過程においても継続的に指導することが望ましい
教科学習等での活用
- 生成AIの利活用が主たる目的とならないよう配慮
- 学習指導要領に示す資質・能力の育成に寄与するものであること
- 教育活動の目的を達成する観点から効果的な利活用となること
厳守事項
禁止事項
項目 | 内容 |
---|---|
1 | 教育に係る目的以外の利用 |
2 | 個人情報および機密情報を取り扱うこと(例外的に認められた場合を除く) |
3 | 著作権、肖像権等および関係法令等を遵守した利用に反すること |
4 | その他、情報システム管理者が別に定める事項に反すること |
取扱い禁止データ
項目 | 内容 |
---|---|
1 | 個人情報または成績情報の記載されたデータ |
2 | 児童・生徒等または教職員の利益に重大な損害を与える恐れのあるデータ |
3 | 公平かつ円滑な学校運営を著しく妨げる恐れのあるデータ |
4 | 事故等が発生したときに、その復元等が著しく困難となるデータ |
5 | 上記の他、機密保持の観点などから保護を要するデータ |
生成物に関する著作権、肖像権の考慮
- 生成物が意図せず著作権者の権利を害することがないよう配慮
- 特定の固有名詞を入力するなど、既存の著作物と類似したものを意図した生成は行わない
- 生成物の利用に先立ってインターネット検索等により、既存の著作物と類似していないかを確認することが望ましい
都立AIスマートルール
児童・生徒向けの「都立AIスマートルール」の基本事項:
- 自身の能力を向上させるために利用しよう
- 生成AIを知り、適切に使いこなす力を身に付けよう
- 社会のルールを守り、他者の権利を尊重して利用しよう
※これらのルールは、全ての生成AIを利用する際に守るものとされています。
初回授業モデル指導案
生成AI研究校での実践に基づき、3つのパターンの指導案が提示されています:
- 基礎的な理解を重視したパターン
- 応用的な思考を重視したパターン
- 特別支援学校向けパターン
いずれも、生成AIの基本的な仕組み、活用方法、注意点を体験的に学ぶことを目指しています。
主な学習活動
- 生成AIの身近な活用事例の紹介
- 生成AIの仕組みの説明
- 実際の生成AIを使った対話や出力結果の観察
- ハルシネーション(幻覚)への理解
- 効果的なプロンプトの作成
- 注意点の共有
特別支援学校向けの工夫
- 生徒が体験しやすいプロンプトの工夫
- 視覚教材の活用
- 楽しいテーマの設定
- ハルシネーションに対する配慮
生成AIについて学ぼう!
生成AIの身近な活用法
- スマートフォンアプリ
- 動画アプリ
- 文書管理ツール
- 学習コンテンツ
- 写真アプリ
- ゲームコンテンツなど
生成AIの基本の仕組み
- 膨大なデータを元にパターンを認識
- 入力内容に当てはまるパターンから新しい出力を生成
- テキスト、画像、音声、動画、音楽、コードなど多様な生成が可能
生成AIの安全性
- ハルシネーション(事実と異なる情報の生成)
- バイアス(データやアルゴリズムの偏り)
- 情報の正確性を自身で判断することの重要性
効果的なプロンプトのつくり方
ポイント | 内容 |
---|---|
1 | タスクの目的の明確化 |
2 | 簡潔で具体的な指示 |
3 | 必要な情報や背景の提供 |
4 | 回答形式の指定 |
5 | 疑似的な役割や文体の指定 |
学校での生成AI活用法
- 文章作成
- 一人一人の学習支援
- 創作活動の支援
- 言語学習
- 評価とフィードバック
- 教員の業務効率化
まとめ
都立学校における生成AIの利活用は、文部科学省のガイドラインに基づき、教育活動の質の向上と教職員の働き方改革を目指しています。都立AI専用サービスの導入に加え、活用指針、AIリテラシー教育、および厳守事項を明確に定めることで、安全かつ効果的な生成AIの利用を推進しています。
特に重要なのは以下の点です:
- ハルシネーション、バイアス、著作権などのリスクへの適切な対応
- AIへの過度な依存を避け、主体的な思考や学びを重視
- 初回授業モデル指導案や啓発資料を活用した具体的な指導
生成AIは万能ではなく、あくまでも「補助的なツールとして活用」すべきであり、人間が主体的に利用することの重要性が繰り返し強調されています。
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